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消化管除染(3) 緩下剤

消化管除染(3) 緩下剤

【要約】

緩下剤(cathartics)は,多くの臨床医が経口中毒患者で投与しているが,単独投与で臨床的転帰を改善するという臨床対照研究はない.中毒治療では,活性炭と結合した中毒物質の腸内滞在時間を短くするために,活性炭とともに使用することを推奨する.急性中毒では,塩類下剤と糖類下剤(ソルビトール)が使用されるが,近年は,その効果からソルビトールが多用されている.

【原理・有効性】

1) 緩下剤の原理
緩下剤には,塩類下剤,糖類下剤,膨張性下剤,粘滑性下剤,刺激性下剤などがあるが,中毒では塩類下剤と糖類下剤(ソルビトール)の使用を推奨する.塩類下剤は,腸管内に水分を引き込む非吸収性の陽イオンと陰イオンからなり,このイオンがつくる浸透圧勾配により腸管内に水分が移行し,腸内容が軟化増大して腸管内圧が上昇する.この刺激により腸管蠕動が増大して排便が生じる.ソルビトールはフルクトースに代謝され,その浸透圧作用により腸管内の水分が増大して排便が誘発される.最近の研究では,塩類下剤よりもソルビトールのほうが活性炭便排出までの時間が短く,持続も長い.
2) 緩下剤の効果
緩下剤の効果は,①活性炭・中毒物質複合体の消化管通過時間を短縮させる,②活性炭による便秘を防止する,③消化管通過時間の短縮により,活性炭からの中毒物質の解離を少なくし,解離した中毒物質が再吸収される時間を短くするなどである.
3) 活性炭との併用
活性炭投与時に緩下剤を併用すると,活性炭・中毒物質複合体の排泄を速め,腸内滞在時間を短縮することができると考えられるが,臨床的に緩下剤の併用の有効性を証明する研究は少ない.ボランティアの検討では,活性炭とソルビトールの併用が活性炭便排泄までの時間を短縮する効果がみられた.
また,ソルビトールには甘味があり,活性炭を服用しやすくするのにも役立つ.活性炭の繰り返し投与で緩下剤を繰り返し投与すると,体液・電解質障害を生じることがあり,緩下剤は初回のみの投与を原則とするが,緩下剤投与後6~8時間で排便がみられないときは,初回量の半量の緩下剤を繰り返し使用する.
4) 腸洗浄について
腸洗浄は,緩下剤投与よりも強力な腸管内容の排出効果があり,緩下剤は併用しない.

【適応】

緩下剤を単独で使用しても効果は低く,活性炭投与後に使用することを推奨する.下痢をしている患者では,緩下剤の投与は不必要である.腸雑音が低下しているときには注意して使用する.

【禁忌】

禁忌は,麻痺性イレウス,腸管閉塞,腹部外傷,腐食性物質の服用,重症の電解質異常である.塩類下剤はマグネシウム,ナトリウムなどを含有しているため,心機能,腎機能低下時には慎重に投与する.

【方法】

ソルビトールは,D-ソルビトール液(65%または75%)を2倍希釈して約35%溶液とし,また,粉末製剤は水に溶解して35%程度の溶液として使用する.投与量は,成人では1~2g/kg,小児では0.5~1g/kgとする.
塩類下剤には,硫酸マグネシウム,硫酸ナトリウム,クエン酸マグネシウム,酸化マグネシウムがある.
クエン酸マグネシウム(マグコロール:液体13.6%,250ml中34g含有,マグコロールP:散剤68%,1包50g中34g含有)は24ml/kg,または27~34gを1回に投与する.硫酸マグネシウムは成人で15~20g,小児で250mg/kgを使用する.
投与は胃洗浄・活性炭投与後に,緩下剤を服用させるか,胃管から投与する.

【合併症】

緩下剤の投与により,体液・電解質異常,血管内脱水,高ナトリウム血症,低血圧,アシドーシス,腹部膨満などが生じることがある.
マグネシウム含有緩下剤では高マグネシウム血症が生じる.とくに過量投与,腎機能障害が存在するときに生じやすい.また,適切な量でも,頻回投与では正常の腎機能でも生じる.高マグネシウム血症では,血圧低下,悪心・嘔吐から,筋麻痺をきたし,最重症症例では呼吸抑制,意識障害,低体温,心停止にいたる.心電図異常もよく知られている.
ソルビトールは合併症の報告は少ないが,悪心・嘔吐,腹痛を伴うことがある.
小児・老人では,体液・電解質異常が発生することがあり,緩下剤の投与には注意が必要である.

TEL 03-3384-8123

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