中毒医療の発展と中毒事故・事件の防止に貢献することを目的としています

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代表理事挨拶

代表理事挨拶

代表理事 須﨑紳一郎

このたび嶋津岳士教授の後を受けて、端無くも日本中毒学会代表理事を仰せつかりました。浅学非才の身ながら、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

中毒はやや奇異な臨床分野に見えます。現在の臓器別疾患系統からは分類できませんし、診療科も何科なのかよく分からない。でも現実に日々患者は発生し病院に搬送されており、そのmedical needsに対しただ手をこまねいていることは許されない。日本中毒学会は臨床急性中毒に対処する本邦で唯一の専門学会であり、この領域における医学・医療面でのバックボーンを担う意義は大きいものがあります。

本学会の活動を考えると、やはりその主軸の一つに総会・学術集会の充実があるべきでしょう。それは症例経験を持ち寄り真摯に討論することが、RCTや再現実験のできないこの分野においてはとりわけ重要だからです。例を挙げれば、いわゆる「中毒致死量」はよく口に出されますが、実はヒトを対象にした正確な中毒致死量はほとんど分かっていません。法医学報告は死体血濃度を示すに過ぎませんし、動物実験のLD50値はあくまで小動物での実験値であって、ヒトに当てはめることの適否は不明です。でも一施設で多くの症例経験をすることもまた不可能。であるなら、臨床的LD50を知るには個別経験を互いに持ち寄り、生死一例ごとの分析値を地道に蓄積することしかありません。またいま多くの臨床学会が専門医制度整備の煽りも受けて学術集会の一般演題が軽視され、ともすれば「スタンプラリー」と嘲られる状況に陥っています。本学会においても専門医制度の位置づけはさらに検討されるべきですが、少なくとも総会・学術集会が単なるお祭り、あるいはイベントと化すことなく、明日の診療に向けて臨床を討議し合う本質を堅持すべきです。

学会がその裾野を拡げ、活動に厚みを持たせるには会員数の増加も図る必要があります。本学会は長らく会員数1,000名前後で推移しており、大きな変動がありません。継続性が高く熱心な、いわばコアな会員が多いのですが、今後に向けて、特に若手フレッシュパワーの加入が強く望まれます。また本学会は臨床医学会でありながら会員が臨床医(救急医)のみならず薬剤師や分析担当者、情報担当者ら幅広い職種で構成されていることは大きな特徴です。学会認定資格をフラットな「クリニカル・トキシコロジスト」としているのもこの点にありますが、資格のあり方とは別に、会員の幅広い職種構成と人材の厚さを組織の強みとして生かして行きましょう。そのほか地方会の活性化も急がれ、これら組織を盛り上げ学会活動の基盤をいかに拡げて行くかについて、是非お知恵を賜りたく存じます。

今後の学会活動としてはまた、「急性中毒標準診療ガイド」の改訂が大きく取り上げられます。本書をわが国における急性中毒診療のガイドラインとして本学会が公表したのは2008年です。発刊後すでに8年が経過してこの間の知見の進歩、状況の変化、新たな解毒拮抗薬の導入などに追いついていません。厚生労働省による診療報酬算定の基礎として本書の分析項目が取り上げられる趨勢を見れば、内容を再精査し、時代に適合したものにすることは学会の責務として喫緊のものとなっています。また本学会は学会認定資格を発給していますが、寄るべき根拠を示し、習得すべき知識内容水準が事前に明示されなければ、資格試験の正当性が揺らぎます。このためにも本書の改訂を急ぐ必要に迫られています。

さらに昨今の情報化の進行は急速で、本学会もこれと無縁ではいられません。現在「中毒研究」を学会機関誌として定期発刊していますが、より良い情報の伝達手段として、また医学研究の媒体として、なお検討が進められるものと思います。この他学会主導の研究や近接他領域との交流の推進、社会に向けて開かれた情報の発信なども求められていくものと思います。

現在われわれが平常は危険を意識することなく安全に生活できることは非常に幸せですが、一方で我々を取り巻く化学物質の数は日々増大の一途であり、事故や災害ばかりか化学テロの脅威も、それを実体験した日本ではすでに空論ではありません。本学会は足元をしっかりと見据えつつscienceとartを追求し、中毒診療を通じて社会に広く貢献して行きたいと考えます。

平成29年1月
代表理事 須﨑紳一郎

TEL 03-3384-8123

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